『94歳のゲイ』公開初日となる6/8(土)の上映後、吉川元基監督による舞台挨拶を開催しました。まずは当初登壇予定だった、現在95歳の本作主演、長谷忠さんの容体をご説明。「想像以上に元気です」との報告に、観客のみなさんも安心された様子。MBS報道記者の吉川監督は、西成で取材中に90代のゲイの方が住んでいると聞き、著名人ではない高齢のゲイの方がいることを想像もしていなかったため驚き、かつ自身の反省になったと言います。知られていない高齢者のゲイという存在をなかったことにしたくないという思いから、まずは会って話をさせていただくことから始めたそうで、長谷さんからは「(自分を)おかしいと思うやろ?」とこちらの人間性を試される質問をされ、吉川監督も自分のことをさらけ出して距離感を縮めていったと話されました。
長谷さんのケアマネージャーで急逝された梅田さんに話題が及ぶと、長谷さんは「ゲイの世界のことを教えてくれた」大先輩と呼び、梅田さんとお互いに大先輩と呼び合いリスペクトしあっていたそうです。またテレビ版「93歳のゲイ」を東京で視聴し、長谷さんのもとを訪れたボーンさんはご自身の将来のロールモデルを探していたそうで、今も2ヶ月に一度交流を重ね、梅田さんから長谷さんとの交流のバトンを渡されたと感じておられるとのお話もありました。
今年4月に人生初上京で舞台挨拶とともに参加したレインボーパレードでは、長谷さん自身も中高年のゲイがこんなにたくさんいることに驚き、また最近大学に招かれて講演をする際に必ず「LGBTQの人はいますか」と問いかけると、いくつも手が上がったと言います。時代がどんどん変わっていることを実感されているということに話題が及ぶと、吉川監督は「100年前、同性愛は治さなければいけない病気で、異性愛者として生きなくてはならなかった」とずっと黙って生きてきた人たちが数多くいる歴史についても言及され、変わった今でも旧態依然とした政治をまずは動かすことと力を込めました。
撮影を通じて、どんどん元気になり今はとても明るくなったという長谷さん。その長い人生から、自分を貫いて生きること、人を愛することなど多くのことを感じとれる作品になっているのではないでしょうか。